生活習慣病とは
日本は世界でも有数の長寿国となりましたが、急速な高齢化とライフスタイルの変化にともない、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病といった生活習慣病が多くなり、寝たきりや認知症などの要介護者も増加しています。
これらの背景には、食生活、運動習慣、ストレス、飲酒、喫煙などの生活習慣が強く関与しており、生活習慣病を予防するには、日々の生活が重要になります。
メタボリックシンドローム
生活習慣病には、おなかまわりの内臓に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満が大きくかかわっています。
内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態を、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)といいます。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満をベースに高血糖、高血圧、脂質異常が複数重なることによって、動脈硬化を進行させ、心臓病や脳卒中といった生活習慣病の危険性を急激に高めます。
《メタボリックシンドロームの診断基準》
●内臓脂肪:腹囲(おへその周り) 男性 85cm以上、女性90cm以上
に加えて、下記の2つ以上の項目にあてはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。
●高血糖:空腹時血糖 110mg/dL
●高血圧:最高(収縮期)血圧 130mmHg以上
最低(拡張期)血圧 85mmHg以上
のいずれかまたは両方
●脂質異常:中性脂肪 150 mg/dL以上
HDLコレステロール 40mg/dL未満
のいずれかまたは両方
これらの項目は、さいたま市特定健康診査を
受けていただくことで、チェックすることができます。
さいたま市特定健康診査はさいたま市国民健康保険の加入者が
対象になります。その他に、後期高齢者健康診査や健康増進
健康診査などの健康診査も実施しています。国民健康保険
以外の社会保険等に加入している方は、加入している保険組合の健康診査をお受けください。
詳しくは↓↓↓
年に一度は健康診査を受け、メタボリックシンドロームを早期に発見し、糖尿病や高血症等生活習慣病の発症及び重症化を予防していきましょう。
《メタボリックシンドロームの予防》
メタボリックシンドロームのベースとなっている内臓脂肪は、食べ過ぎや運動不足などの不健康な生活習慣を改善することで減らすことができます。
生活習慣をチェックして、身体活動を活発にし、食事の量、バランス、回数などに注意し、メタボリックシンドロームを防ぎましよう。
メタボリックシンドローム予防のための食生活
・主食・主菜・副菜をそろえ、栄養のバランスのよい食事をする
・1日三食きちんと食べる
・夕食は軽めにする
・油を使った料理は控えめにする
・副菜を多く食べることが効果的
・食塩を控えめにする
・まわりに食べ物を置かない
・好きなものでも、一人前にする
・寝る2時間前に重いものは食べない
・食器は小さくする
・外食は、丼ものより定食にする
メタボリックシンドロームの詳しい情報は
厚生労働省e-ヘルスネット「メタボリックシンドローム」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic
厚生労働省「生活習慣病予防」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu/seikatusyuukan.html
糖尿病
●糖尿病とは
私たちのからだは、ブドウ糖を細胞内に取り込み、エネルギー源にするために、インスリンというホルモン を分泌しています。
このインスリンの分泌が少なくなったり、インスリン自体の働きが悪くなると、 細胞内にブドウ糖が取り込まれづらくなり、
血液中のブドウ糖が増えます。
血液中のブドウ糖の濃度を 血糖値といい、血糖値が上がり、正常な範囲を超えた状態を高血糖といいます。
この高血糖の状態が続くことによって、からだにさまざまな悪影響をもたらすのが糖尿病です。
●糖尿病にはいくつかのタイプがあります。
・1型糖尿病…自己免疫によって発症
・2型糖尿病…主に食事や生活習慣が大きく影響して発症
・妊娠糖尿病
・遺伝子異常や他の病気や薬剤の作用による発症
●糖尿病の発症、進行予防のために
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●糖尿病の合併症
治療を途中で中断し、放っておくことで、重大な合併症を引き起こしてしまいます。
糖尿病神経症:合併症の中で最も早く出てきます。中心となる足や手の末梢神経障害の症状の出かたはさまざまで、手足のしびれ、
けがややけどの痛みに気づかないなどです。
痛みに気づかずけがの発見に遅れ、重症化してしまうことも少なくありません。
糖尿病網膜症:目の底にある網膜という部分の血管が悪くなり、視力が弱まります。中には失明する場合もあります。
糖尿病腎症:尿を作る腎臓の、糸球体という部分の毛細血管が悪くなり、だんだんに尿が作れなくなります。尿が作れなくなると、
からだの中の老廃物を排出できなくなってしまうため、人工透析といって、機械で血液の不要な成分をろ過することが必要になります。
週に2~3回、病院などで透析を受けるようになるので、日常生活に大きな影響を及ぼします。
現在、人工透析になる原因の1位がこの糖尿病腎症です。
糖尿病の詳しい情報は↓↓↓
厚生労働省「糖尿病」
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b7.html
高血圧症
血液が血管の中を通るとき、血管にかかる圧力のことを血圧といいます。
心臓が収縮して血液を押し出した瞬間は、血管にいちばん強く圧力がかかり、これを収縮期血圧(最高血圧)といます。そして、収縮した後に心臓が拡張する(ひろがる)ときには、圧力がいちばん低くなり、これを拡張期血圧(最低血圧)といいます。収縮期血圧と拡張期血圧のどちらが高くても、高血圧症といいます。
高血圧症を放置すると、血管が硬くなる動脈硬化になったり、のちに虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳卒中などの発作を起こすおそれがあります。
高血圧症の原因は様々なものがありますが、なりやすくする危険因子というのがあります。遺伝、肥満、耐糖能異常(糖尿病予備群)、ストレス、喫煙、塩分の多い食事、飲酒の習慣などがありますが、これらの危険因子は、生活習慣の改善により防ぐことができます。
●高血圧症を防ぐための日常生活上の注意
高血圧症の発生や進行を防ぐためには、生活習慣を改善して血圧が上がらないようコントロールすることが大切です。
肥満を防ぎ適性体重・腹囲を維持する
適度な運動
塩分を控える
ストレスや急激な温度変化に注意
十分な睡眠をとる
禁煙
便秘の解消
血圧のチェック
高血圧症の詳しい情報は↓↓↓
厚生労働省e-ヘルスネット「高血圧症」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-003.html
脂質異常症
脂質異常症というのは、血液中の脂質、具体的にはコレステロールや中性脂肪(代表的なものはトリグリセリド)が、多過ぎる病気のことです。血液中の脂肪が異常に増えても、ふつうは症状がありません。そのまま放置すると、増えた脂質はどんどん血管の内側にたまって、動脈硬化になってしまいます。ところが、動脈硬化になっても、まだ自覚症状がないので、心筋梗塞や脳梗塞の発作を起こして、やっと脂質異常症の重大さに気づくということも少なくありません。
脂質異常症は、動脈硬化の大きな危険因子です。心筋梗塞や、脳梗塞だけでなく、高血圧の悪化や腎臓病などにも大きく影響しています。
脂質異常症予防のための食生活
・偏らずバランスのよい食事
・総摂取エネルギー量を抑えて適正な体重を保つ
・飽和脂肪酸(おもに獣肉類の脂肪)1に対して不飽和脂肪酸
(おもに植物性脂肪や魚の脂)を1.5~2の割合でとる
・ビタミン、ミネラル、食物繊維もしっかりとる
・高コレステロールの人は、コレステロールの多く含む食品を控える
・中性脂肪が高い人は、砂糖や果物などの糖質とお酒を減らす
リンク↓↓↓
脂質異常症予防のための運動
・とり過ぎたエネルギーを消化し、脂肪分が皮下や内臓に蓄積されるのを防ぐ
・血行を促して血管の弾力をよくしたり、血管を拡げるなどして、血圧を下げ、動脈硬化を防ぐ
・体内で脂肪の流れがよくなるように調節する酵素の一つであるリパーゼを活性化させ、LDL(悪玉)コレステロールを減らして、HDL(善玉)コレステロールを増やす
リンク↓↓↓
脂質異常症の詳しい情報は↓↓↓
厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-012.html
<心臓病>:心臓病には様々なものがありますが、動脈硬化が原因となる、狭心症や心筋梗塞は生活習慣に大きく関係しています。狭心症や心筋梗塞は虚血性心疾患といわれ、心臓をとりかこむ冠動脈(冠状動脈)とよばれる心臓専用の血管がせばまり、血液が通りにくくなり、心臓に十分な血液が行かない状態をいいます。命を落とす場合もあり、メタボリックシンドロームの高血糖、高血圧、脂質異常と喫煙も危険因子です。
心臓病の詳しい情報は↓↓↓
厚生労働省e-ヘルスネット「狭心症・心筋梗塞などの心臓病」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-005.html
<脳卒中>:脳卒中は、脳の血管がつまったり、破れたりして、その先の細胞に栄養が届かなくなり、細胞が死んでしまう病気です。脳卒中には脳の血管が詰まるタイプの脳梗塞、脳の血管が破れるタイプの脳出血があります。どちらも生活習慣に大きく関係しています。
脳卒中を発症すると、命に関わることや、からだの片側が麻痺したり、言葉が出なくなったり、ものが飲み込めなくなる等の後遺症を残す場合が多くみられます。
脳卒中も心臓病と同じ危険因子に加え、大量の飲酒なども危険因子となります。
脳卒中の詳しい情報は↓↓↓
厚生労働省e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-006.html
<慢性腎不全(CKD)>:慢性腎臓病はchronic kidney disease(CKD)といい、腎機能が慢性的に低下したり、尿たんぱくが継続して出る状態です。糸球体が1分間にどれくらいの血液を濾過して尿を作れるかを示す値であるGFRが1分間に60ml未満の状態、または尿たんぱくが3ヶ月以上続くと慢性腎不全と診断されます。
慢性腎不全が進行すると、末期腎不全となって、人工透析や腎移植が必要になってくるばかりか、動脈硬化の危険因子としても重要で、脳卒中や心筋梗塞を発症させることもあります。
がん
現在日本の死亡原因の第1位を占めるのが「がん」です。
昔は不治の病といわれていたがんも、最近では研究・治療が進歩し、早期発見により早期治療が可能性となっています。
がんは、症状が現れると進行している場合も少なくありません。症状がなくても検診を受けることが大切です。
市では、各種がん検診を行っていますので、健康診査とあわせて、ぜひがん検診も受けましょう。
さいたま市がん検診の受け方↓↓↓
さいたま市「がん検診等のご案内」
https://www.city.saitama.jp/002/001/014/006/001/p001476.html
がんに関する詳しい情報は、がん情報サービス→↓↓↓
独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター
http://ganjoho.jp/public/index.html
がんを予防するには
これまでの研究から、がんの原因の多くはたばこや飲酒、食事などの生活習慣にかかわるものだとわかっています。1996年にハーバード大学のがん予防センターから発表されたアメリカ人のがん死亡の原因では、喫煙(30%)、食事(30%)、運動不足(5%)、飲酒(3%)の合計で全体の68%になりました。これらのがん死亡は、生活習慣の見直しによって予防できたものと考えられます。生活習慣や環境は国によって違い、がんの原因の割合も国によって異なります。しかし、生活習慣の改善で多くのがんが予防できることについては、日本でもアメリカと同様です。社会全体の対策として、一人一人の行動として、偏りのない科学的根拠に基づくがん予防法の見極めが、重要な課題となります。
日本人のためのがん予防法
●現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法
喫煙 | たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。 |
飲酒 | 飲むなら、節度のある飲酒をする。 |
食事 | 食事は偏らずバランスよくとる。 * 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。 * 野菜や果物不足にならない。 * 飲食物を熱い状態でとらない。 |
身体活動 | 日常生活を活動的に過ごす |
体形 | 成人期での体重を適正な範囲に維持する(太りすぎない、やせすぎない) |
感染 | 肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染している場合はその治療の措置をとる。 |
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)はたばこを吸い続けることのよって発症する、呼吸器の生活習慣病です。また、生活習慣病は喫煙と大きく関係しており、生活習慣病の予防に禁煙は欠かせません。
CKD(慢性腎臓病:まんせいじんぞうびょう)
CKD(シーケーディー)とは、1つの病気の名前ではなく, 腎臓の働きが徐々に低下していくさまざまな腎臓病の総称です。
成人の8人に1人がCKDであると推計されています。
健診で尿検査異常や腎臓機能異常を指摘された方、既に糖尿病や高血圧などの方は特に注意が必要です!
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※eGFR:腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する力があるかということを表す数値
下記に1つでも当てはまる方は、CKDのリスクが高い方です ◇ 高血圧 |
CKDは初期には自覚症状がほとんどない「沈黙の病気」で、症状が現れる前から様々な他の病気を引き起こしやすくなります。
◆CKDが進行すると?
CKDが進行すると腎不全となります。
腎不全とは、腎臓が十分にその役割を果たせなくなった状態です。
放置すると徐々に腎臓の機能が悪くなり、進行すると透析治療や腎臓移植が必要になることがあります。
また、食事の内容や水分などを制限する必要があります。
腎臓ってどんな働きをしているの?
腎臓は、心臓から送り出された血液をろ過して、老廃物を尿として体外に排泄し、体の中を浄化してきれいに保ちます。
もともと腎臓の機能は加齢による血管の老化が原因で低下しますが、さらに血管を痛めるような糖尿病や高血圧症等があると
腎臓機能の低下が早まります。
透析ってどんな治療?
腎臓に代わって人工的に体の血液を浄化する働きを代行する治療法です。
腎臓の機能を回復させる治療法ではなく、また腎臓の機能を完全に補うものでもありません。
治療の頻度は病状等により異なりますが、週3回、1回4時間程度、病院で行うなどの透析療法があります。
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【参考】
※「腎臓で後悔したくないあなたへ」より転記
<監修>
厚生労働行政推進調査事業費補助金(腎疾患政策研究事業)
「腎疾患対策検討会報告書に基づく対策の進捗管理および新たな対策の提言に資するエビデンス構築」
(研究代表者 柏原直樹)
厚生労働科学研究費補助金(腎疾患政策研究事業)
「腎疾患対策検討会報告書に基づく慢性腎臓病 (CKD)対策の推進に資する研究 」
(研究代表者 岡田浩一)
研究班HP https://ckd-research.jp/