たばこと健康
たばことがん まず、知っておきたいこと
●がんを予防するためにはたばこを吸わないことが最も効果的
がんを予防するためには、たばこを吸わないことが最も効果的です。
2019年では、男性の喫煙率は27.1%で、女性は7.6%です。
現在たばこを吸っている人も、禁煙することによってがんになるリスクを下げることができます。
これまでの研究から、たばこが肺がんをはじめとするさまざまながんの原因となることが、科学的に明らかにされています。
がんに なった人のうち、男性で30%、女性で5%はたばこが原因だと考えられています。
図1 たばこを吸っている本人がなりやすいがんの種類(科学的に明らかなもの)
厚生労働省「喫煙と健康」喫煙の健康影響に関する検討会報告書(2016年)より作成
●たばこを吸っているがん患者では別の新たながんが発生しやすい
たばこを吸っているがん患者では、別の新たながん(二次がん)が発生しやすいことが明らかになっています。また、がん患者がたばこを吸うと、がんの再発、治療効果の低下の悪影響もあると考えられています。
●加熱式たばこについて
加熱式たばこの煙には、ニコチンや発がん性物質などの有害物質が含まれています。健康への悪影響が懸念されています。
●禁煙はすぐに、そして長期的な健康上のメリットがある
がんの発生や心臓の病気など、たばこによる悪影響は、禁煙することによって抑えることができます。禁煙によるメリットはすぐに効果があるばかりか、長期間持続し、病気を予防して、長生きすることができます。
●たばこを吸っている人の周りの人も肺がんになりやすくなる
たばこを吸う本人以外がたばこの煙にさらされることを「受動喫煙(じゅどうきつえん)」と呼びます。世界中の研究結果から、受動喫煙も肺がんの原因となることが明らかとなっています。
●望まない受動喫煙を防ぐために
法律が改正され、2020年4月からは多数の人が利用する施設は原則屋内禁煙になりました。また、標識に注意して行動することで、たばこの煙を避けることができるようになります。
【出典】国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/smoking/tobacco01.html
受動喫煙
●受動喫煙とは、「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」(平成22年2月25日付健発0225第2号厚生労働省健康局長通知)をいいます。
●たばこの煙に含まれる有害物質は副流煙に多く含まれているため、喫煙している人の近くにいると受動喫煙によりたばこによる害を受けるリスクが高まります。
副流煙…たばこの火から立ちのぼる煙
主流煙…喫煙者が吸うたばこの煙
呼出煙…喫煙者から吐き出される煙
●受動喫煙による害
乳幼児………乳幼児突然死症候群
子ども………ぜんそく 気管支炎症候群
妊婦…………低出生体重児の出産 早産 流産 乳幼児突然死症候群
周囲の人々…肺がん、虚血性心疾患などによる死亡率等の上昇 COPD(慢性閉塞性肺疾患)
●受動喫煙を防ぐため、2018年7月25日に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、望まない受動喫煙を防止するための取組がマナーからルールになりました。
●たばこの煙には空気清浄機では除去しきれない有害物質も含まれています。周りに喫煙している人がいると、どんなに気を付けても、有害物質を体内に取り込んでしまう恐れがあります。喫煙している人は、大切な誰かがたばこの害を受けてしまう前に、禁煙してみてはいかがですか。
COPD(シーオーピーディー)は、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれています。
COPDは病名ではなく、主に長年の喫煙習慣や肺の成長障害が原因となって、徐々に呼吸機能が低下していく肺の病気の総称です。
たばこなどに含まれる有害物質を長年吸い込むことで、空気の通り道の気管支に慢性的な炎症が生じてたんが詰まり、気管支の壁が分厚くなって気管支が狭くなります。
また、気管支の先にある肺胞(はいほう)が少しずつ破壊されていきます(肺気腫)。
そのため、気づかないうちに徐々に肺の機能が低下して、息をするのがつらくなり、進行するとからだが酸素欠乏になる病気です。
COPDは、からだの中で酸素が不足し、呼吸するだけでも負担がかかるので、体力を消耗します。
そのため、症状が進行し悪化すると、体重減少、心不全などを伴います。
COPDの主な症状 ・階段や坂道で息が切れる |
●初期のCOPDは自覚できる症状に乏しく、気が付きにくい疾患です。
スクリーニングシートを使ってセルフチェックをしてみましょう!
COPD集団スクリーニング質問票※
※独立行政法人 環境再生保全機構 ぜん息・COPD相談室公式サイト ホームページへ
●COPDの1番の危険因子はたばこ
喫煙者や、禁煙をしていても過去に長期間喫煙していた方、また長期間にわたり受動喫煙によりたばこの影響を受けている場合も発症する恐れがあります。
●COPDの予防、悪化防止のために
COPDに対する最も効果的な予防は、禁煙することです。
また、COPDを患っていても、禁煙することで、症状の進行をゆるやかにできます。
治療が必要な生活になる前に、禁煙しましょう。
COPDを患ってしまうと、肺が健康時と同じような状態に戻ることはありません。
治療によって肺はある程度まで回復しますが、最終的には症状が進行・悪化しないように、維持することが目的となります。
予防し発症させない、また発症したとしても早期に発見し早期に治療を開始することが大事です。
息切れ・せきやたんが長期にわたって続く場合、一度診察を受けましょう。
たばこと歯周病
●歯周病は、歯と歯肉(歯ぐき)のすきま(歯周ポケット)から細菌が侵入し、歯肉に炎症を引き起こし、さらには歯槽骨(歯を支える骨)を溶かし、歯の周囲を支えている組織を壊してしまう病気です。
●喫煙は糖尿病と並んで歯周病の二大危険因子とされています。たばこの煙の入口である口腔、そして歯周組織は直接その影響を受け、免疫力の低下が起こったり、歯周病が治りにくくなります。
●歯を失う80%以上の原因はむし歯と歯周病ですが、こうした歯科疾患は自覚症状を伴わないことも多く、疾患がある程度進行した時点で症状が生じるため、歯科健診を定期的に受けることが大切です。
さいたま市「がん検診等のご案内」
<成人歯科健康診査>をご参照ください
https://www.city.saitama.jp/002/001/014/006/001/p001476.html
たばこと女性
喫煙は美容に対しても悪影響を及ぼします。たばこを吸うとニコチンにより毛細血管が収縮され、一酸化炭素がヘモグロビンと結びつき、からだが慢性的な酸欠状態になり、血行も悪くなります。そのため、肌の新陳代謝が悪くなり肌が荒れてしまいます。また、メラニン色素の代謝に関係するビタミンCを体内で消費させるのでシミ、そばかすの原因にもなります。
ヤニによる歯の黄ばみや、歯肉の血流障害による黒ずみの原因にもなったり、
その他に、女性の罹患率が高い、乳がん、子宮がんに罹るリスクが増加したりします。
妊婦が喫煙すると、たばこの害は本人だけでなく、胎児にも影響します。母体には早産、流産の危険性が高まり、生まれた子に対しては、低出生体重児、乳幼児突然死症候群の危険があります。
20歳未満の喫煙
20歳未満の喫煙は法律で禁止されています。
なぜ20歳未満はたばこを吸ってはいけないのでしょうか。
心と体が成長の途中にある未成年者は大人よりアルコールの悪い影響を受けやすいからです。
- 脳が酸素欠乏状態になるため、思考力や集中力が落ちてしまう
- 身体全体が酸素欠乏状態になり、運動中もすぐに息切れしてしまう
- 酸素が全身にいきわたらないため、身長が伸びにくくなる
- 煙草をやめにくくなる
〇喫煙開始年齢が早いほど、健康被害が大きく、またニコチン依存も強くなります。
※ニコチン依存症とは…血中のニコチン濃度がある一定以下になると不快感を覚え、喫煙を繰り返してしまう疾患です。
たばこを吸いたいと思った時、それを抑えることができなくなってしまいます。
たばこがないとイライラするなどの不快な症状があらわれ、なかなかやめられなくなってしまいます。
〇大人よりも害が大きいことが知られています。
喫煙開始年齢が早いほど、がんや心血管疾患などたばこに関連する病気になりやすく、早世するリスクが高くなることが明らかになっています。
〇たばこの煙には、ニコチンやタールなどの有害物質が200種類以上含まれています。
そのため、たばこは吸う本人だけでなく、周囲の人の健康を害することにもつながります。
未成年者が喫煙するきっかけは、好奇心に次いで、友人などからの誘いとなっています。
断り方については、様々なホームページに掲載されていますので、ヒントにしてみてください。
あなたの「吸わない」の決意で、あなたの体、心、未来を守りましょう。
参考
喫煙、飲酒及び薬物乱用行動に つながる様々な要因を知ろう!(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/08/1288462_05.pdf
喫煙、飲酒と健康 (文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/20210423-mxt_kouhou02-08111804_3.pdf
e-ヘルスネット 若者の健康と喫煙 (厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-006.html
禁煙しよう
厚生労働省による令和元年国民健康・栄養調査では、現在習慣的に喫煙している人の割合は、男性が27.1%、女性が7.6%、総数では16.7%と報告されています。
また、同調査では現在習慣的に喫煙している人のうち、喫煙をやめたいと思う人の割合を男性が24.6%、女性が30.9%、総数では26.1%と報告しています。喫煙している人の割合は減少傾向にありますが、やめたくてもやめられず喫煙を続けている人が、まだ大勢います。
禁煙を成功させるため次のことを試してみてはいかがですか。
●さいたま市民の喫煙状況
令和3年の市民調査によると、20歳以上の市民における喫煙している人の割合は、12.2%であり、40~60歳代の男性は他の年代と比較すると20%超と高い結果です。
また、喫煙している人のうち、喫煙をやめたいと思う人の割合は、22.1%です。
出典:令和3年さいたま市健康づくり及び食育についての調査結果報告書
https://www.city.saitama.lg.jp/002/001/014/002/p088144.html
<たばこを吸いたくなったら>
・歯をみがく
・水やお茶を飲む
・深呼吸する
・ガムをかむ(ただし糖分の少ないもの)
・家族に禁煙を宣言して協力してもらう
長期にわたって喫煙を続けている方には、「禁煙なんていまさら」と思うかもしれませんが、喫煙をやめたときからからだは回復に向かいます。勿論早期に禁煙することが望ましいことですが、たとえ始めるのが遅くても、禁煙に成功すれば自分のからだが健康になっていくことが実感できると思います。
<禁煙による健康への効果>
禁煙による健康へのメリット ファクトシート
禁煙してからの経過時間 | 健康上の好ましい変化 |
20分以内 | 心拍数と血圧が低下する |
12時間 | 血中一酸化炭素値が低下し正常値になる |
2~12週間 | 血液循環が改善し肺機能が高まる |
1~9か月 | 咳や息切れが減る |
1年 | 冠動脈性心疾患のリスクが喫煙者の約半分に低下する |
5年 | 禁煙後5~15年で脳卒中のリスクが非喫煙者と同じになる |
10年 | 肺がんのリスクが喫煙者に比べて約半分に低下し、口腔、咽喉頭、食道、膀胱、子宮頸部、膵臓がんのリスクも低下する |
15年 | 冠動脈性心疾患のリスクが非喫煙者と同じになる |
出典:「国立がん研究センターがん情報サービス」
たばことがん もっと詳しく知りたい方へ
たばこをやめられない、禁煙できない原因は意志が弱いからではなく、「ニコチン依存症」が大きく影響しているかもしれません。ニコチンには強い中毒性、依存性があり、血液中の濃度が下がると、ニコチン摂取、つまりたばこを吸いたいという衝動が襲ってきます。最近では、ニコチンの離脱症状(禁断症状)を軽減し、禁煙を助ける禁煙補助薬を処方してくれる禁煙支援薬局や、ニコチン依存症を治療する禁煙外来を開設している病院などもありますので、これらを利用し、禁煙を成功させるのもひとつの選択肢です。
お近くまたはかかりつけの医療機関にお問合せいただき、禁煙外来が開設されていれば一度ご相談してみてはいかがですか。また、禁煙治療には健康保険が適用される場合もあります。あわせてお問合せしてみてはいかがでしょう。
さいたま市内の禁煙外来リスト
さいたま市禁煙外来リスト 第4版 (1.0MB)
特定非営利活動法人 日本禁煙学会「全国禁煙外来・禁煙クリニック一覧」
http://www.kinen-map.jp/hoken/list.php?pref_id=11
財団法人 健康・体力づくり事業財団「健康ネット~ニコチン依存度判定法~」
https://www.health-net.or.jp/tobacco_archive/risk/rs210000.html
ファイザー株式会社 禁煙外来へようこそ。お医者さんと一緒に禁煙をはじめませんか?
http://sugu-kinen.jp/
(ファイザー株式会社は平成27年1月にさいたま市とたばこ対策及び健康づくりの推進に向けた包括的連携に関する協定を締結しました。)